耐薬品性

耐薬品性(chemical resistance) とは、材料(プラスチック・ゴム・金属など)が 酸・アルカリ・有機溶剤・油などの化学薬品にさらされたときに、物性や外観が劣化しにくい性質 を指します。

  • プラスチックでは、薬品によって 膨潤・ひび割れ・溶解・変色 が起こる場合があるため、用途に応じた樹脂選定が重要です。

劣化の種類

  1. 膨潤:薬品を吸収して体積が膨らむ

  2. 溶解:樹脂自体が溶けてしまう

  3. 応力割れ(ESC: Environmental Stress Cracking)

    • 外力と薬品が組み合わさって亀裂が入る

  4. 化学分解:酸やアルカリで分子鎖が切断される

  5. 変色・表面劣化:外観品質の低下

耐薬品性に優れるプラスチック

  • フッ素樹脂(PTFE, PFA, FEP, PVDF)

    • 酸・アルカリ・有機溶剤すべてに強い

  • PE(ポリエチレン, HDPE, UHMW-PE)

    • 酸・アルカリに強い、安価で広く利用

  • PP(ポリプロピレン)

    • 酸・アルカリに良好、化学容器や配管に使用

  • PPS, PEEK

    • 高温環境でも耐薬品性を維持

耐薬品性が弱いプラスチック

  • PC(ポリカーボネート)

    • 有機溶剤に弱く、応力割れしやすい

  • ABS樹脂

    • 酸や溶剤に侵されやすい

  • ナイロン(PA)

    • 酸や塩基で加水分解しやすい

評価方法

  • 浸漬試験

    • 薬品に一定時間浸して重量変化・寸法変化を測定

  • 引張・曲げ試験

    • 薬品曝露後に機械的強度がどの程度残るかを確認

  • 応力割れ試験(ESC試験)

    • 応力をかけた状態で薬品にさらして亀裂の有無を観察

主な用途

  • 化学薬品タンク・配管(PP, PE, PVDF, PTFE)

  • 医療器具・分析機器(PEEK, PTFE, PP)

  • 自動車の燃料系部品(PPS, PBT)

  • 半導体製造装置(フッ素樹脂、PFA, PVDF)

まとめ

耐薬品性とは、

  • 薬品環境下で劣化や破壊を起こさない性質

  • フッ素樹脂やPE、PPが特に優秀

  • PCやABSなどは薬品に弱い

  • 実使用条件(温度・濃度・応力)を考慮した評価が不可欠

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