保圧(ほあつ/Holding Pressure)とは、
射出成形において 樹脂を金型に充填したあと、製品が収縮しないように加える圧力 のことです。
射出成形のプロセスでは、
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樹脂を射出(充填)する
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金型内が満たされたら 保圧工程 に切り替える
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樹脂が固まるまで圧力を維持する
という流れになります。
保圧の目的
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| ① 収縮の補正 | 冷却中に樹脂が体積収縮するため、保圧で樹脂を追加し、密度を保つ。 |
| ② ヒケ防止 | 製品表面のくぼみ(ヒケ)を防止する。 |
| ③ 寸法精度の安定 | 収縮量を一定にし、寸法のバラつきを抑える。 |
| ④ ガス抜け防止 | 適正な圧で充填を保つことで、空気やガスが逆流しないようにする。 |
保圧の流れ(成形サイクル内の位置)
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射出が終わり、金型が満たされた直後に保圧に切り替わります。
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成形機では「切換位置」や「V/P切換」と呼ばれるポイントで射出圧から保圧圧に変わります。
保圧圧力と時間
🔹保圧圧力(Holding Pressure)
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樹脂を金型に押し込む力。
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一般的に射出圧の 30〜80%程度 に設定します。
| 樹脂種類 | 一般的な保圧圧力 |
|---|---|
| ABS | 40〜70 MPa |
| PP | 30〜60 MPa |
| PC | 60〜100 MPa |
※成形品の厚み・形状・ゲート位置などによって最適値は変わります。
🔹保圧時間(Holding Time)
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樹脂がゲートで固まるまでの時間を確保します。
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短すぎる → ヒケ、寸法不良
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長すぎる → サイクルタイム延長、応力残留
→ 一般的には「ゲートシール時間(ゲートが固まるまでの時間)」が目安です。
保圧設定のポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 圧力が低すぎる | ヒケ・ボイド・寸法不足が発生。 |
| 圧力が高すぎる | バリ・応力割れ・金型への負担。 |
| 時間が短すぎる | 製品が収縮し、体積不足になる。 |
| 時間が長すぎる | 無駄なエネルギー消費、残留応力の増加。 |
最適化の方法
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重量法
保圧時間を変化させ、製品重量が一定になる点を探す。
→ その時点が「ゲートシール時間」。 -
外観チェック
ヒケやバリが出ない範囲で、最小限の保圧を設定。 -
圧力モニタリング
金型内圧センサーを使い、適切な切換位置と保圧カーブを確認。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 保圧(Holding Pressure) |
| タイミング | 射出後〜樹脂が固まるまで |
| 主な目的 | 収縮補正、ヒケ防止、寸法安定 |
| 設定要素 | 保圧圧力・保圧時間 |
| 注意点 | 圧が高すぎるとバリ、低すぎるとヒケ |


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