「結晶性樹脂」は非結晶性樹脂(アモルファス樹脂)と並ぶ代表的な熱可塑性樹脂の分類の一つで、材料選定や成形条件の設定に大きな影響を与える重要な性質です。
結晶性樹脂とは?
結晶性樹脂(Crystalline Resin)とは、高分子鎖が規則正しく配列して結晶構造を持つ熱可塑性樹脂です。
加熱すると明確な融点(Tm)を持ち、結晶が溶けて流動化する特徴があります。
非結晶性樹脂との比較
項目 | 結晶性樹脂 | 非結晶性樹脂 |
---|---|---|
構造 | 分子が規則正しく配列 | 分子がランダム・無秩序 |
融点 | はっきりある(Tm) | なし(ガラス転移点 Tg のみ) |
透明性 | 不透明が多い | 透明なものが多い |
成形収縮 | 大きい(1〜3%) | 小さい(0.2〜0.8%) |
耐薬品性 | 高い | 比較的低い |
寸法安定性 | 結晶化で変動しやすい | 安定している |
主な結晶性樹脂の例と特徴
材料名 | 略称 | 特徴 |
---|---|---|
ポリアセタール | POM | 高強度・耐摩耗性◎、機械部品向け |
ポリプロピレン | PP | 軽量・耐薬品性・安価、家庭用品に多用 |
ナイロン | PA6, PA66など | 吸水性あり・高強度・耐熱性◎ |
ポリエチレン | PE(HDPE, LDPE) | 柔軟・絶縁性・耐薬品性◎ |
ポリブチレンテレフタレート | PBT | 寸法安定性と電気特性が良好 |
ポリフェニレンサルファイド | PPS | 高耐熱・耐薬品性・寸法安定性◎ |
結晶性樹脂の射出成形上のポイント
項目 | 注意点 |
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金型温度 | 高めに設定(結晶化の促進に重要) |
冷却時間 | 非結晶より長め(結晶化時間が必要) |
収縮率 | 結晶度によって変化 → 寸法設計に注意 |
流動性 | 高温では良好だが、冷えると急激に粘度上昇するため高速充填が重要 |
ゲート設計 | ヒケやウェルドの影響が出やすいため工夫が必要 |
結晶化とは?
成形時に樹脂が冷えると、分子鎖が規則正しく配列して結晶構造を作る現象。
これにより:
-
剛性・強度アップ
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耐薬品性・耐摩耗性アップ
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成形収縮アップ
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寸法変動が生じやすくなる
結晶化の程度(結晶度)は、冷却速度や金型温度で制御可能です。
結晶性樹脂まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
特徴 | 分子が規則配列 → 結晶構造を持つ |
成形上の性質 | 融点あり・収縮大・寸法変化に注意 |
長所 | 強度、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性が高い |
短所 | 寸法安定性がやや劣る・不透明・吸水性(PAなど) |
主な用途 | 機械部品、自動車部品、電気製品、日用品 など |
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