離型剤(Release Agent) とは、
成形品が金型に くっつかずにスムーズに離れるようにするための薬剤 です。
金型の表面に薄く塗布したり、スプレーしたりして使用します。
潤滑膜を作ることで、
成形品と金型の「密着」や「焼き付き」を防ぎます。
離型剤の主な役割
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| ① 離型性の向上 | 成形品が金型に貼り付くのを防止 |
| ② 金型の保護 | 摩耗や腐食を防ぐ |
| ③ 成形安定化 | 成形サイクルの安定・外観不良の防止 |
| ④ 清掃性の向上 | 成形後の金型清掃を容易にする |
離型剤の種類
大きく分けて以下の3種類があります👇
① スプレータイプ(外部離型剤)
最も一般的。
成形サイクルの合間に金型表面にスプレーして使用。
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手軽で即効性がある
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一部に塗りすぎ注意(転写・外観不良の原因)
🧴 主な成分
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シリコーン系(一般用)
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フッ素系(高機能・転写少ない)
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ワックス系(長時間効果・再塗布少ない)
② 内部離型剤(マスターバッチタイプ)
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樹脂にあらかじめ添加して混ぜるタイプ
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成形中に離型剤成分が樹脂表面ににじみ出て、離型を助ける
🧴 特徴
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スプレー不要で自動化向き
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成形品の外観に影響しにくい
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ただし添加量の管理が重要(多すぎると塗装・印刷性が悪化)
③ 固形塗布タイプ(ワックス・グリース)
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一定期間離型効果を持続させたい場合に使用
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金型メンテナンス時などに塗布
🧴 用途
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大型金型や樹脂が粘着しやすい成形品
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金型の長期保管防錆にも利用
シリコーン系と非シリコーン系の違い
| 種類 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| シリコーン系 | 潤滑性が非常に高い。長持ちする。 | 汎用成形、離型性重視の部品 |
| 非シリコーン系(フッ素・ワックスなど) | 転写しにくく、塗装・接着性を損なわない。 | 後加工(塗装・印刷)がある製品 |
射出成形での注意点
| 項目 | 注意内容 |
|---|---|
| 塗りすぎ注意 | 成形品表面に転写すると、塗装や印刷がはがれる原因になる |
| 均一塗布 | ムラがあると離型ムラ・ヒケ・光沢ムラの原因 |
| スプレー間隔 | 毎ショットより、数ショットごとに軽く吹く方が安定 |
| 内部離型剤使用時 | 成形条件によって表面へのブリード量が変わるため調整が必要 |
| 金型清掃 | 離型剤の残渣(カーボン・油膜)は定期的に除去する |
離型剤が必要になる主なケース
| 状況 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 製品が金型にくっつく | 金型表面粗い/ゲート位置不良 | 離型剤を併用または金型鏡面仕上げ |
| 製品に白いスジやムラ | 塗布過多 | スプレー量を減らす |
| 塗装・接着不良 | シリコーン転写 | 非シリコーン系に変更 |
| 成形サイクル短縮 | 再塗布不要タイプを採用 | 耐久型離型剤を使用 |
使用例(イメージ)
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成形機を止めず、金型が開いた瞬間にスプレー
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1〜2秒だけ薄く吹きつける
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数ショットは離型性が良くなる
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効果が落ちたら再スプレー
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 離型剤(Release Agent) |
| 主な役割 | 成形品の離型性向上・金型保護 |
| 主な種類 | スプレータイプ・内部添加タイプ・塗布タイプ |
| 成分 | シリコーン系・非シリコーン系 |
| 注意点 | 塗りすぎ、転写、外観不良、残渣に注意 |
| 適用例 | 離型困難な製品、リブ・ボス形状、樹脂の粘着性が強い場合 |


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