ホットランナーとは、金型内部のランナー(樹脂の流れる通路)を加熱して、樹脂を固めずに保つ仕組みのことです。
通常の金型では、ランナー部分の樹脂が冷えて固まり、
製品と一緒に「ランナーくず」として取り出されますが、
ホットランナーではランナーを常に溶融状態に保つため、
ランナーくずが出ません。
ホットランナーの構造
ホットランナーシステムは、主に以下の要素で構成されています。
| 部品名 | 役割 |
|---|---|
| マニホールド(Manifold) | ノズルからの樹脂を複数のゲートへ分配する通路。内部が加熱されている。 |
| ノズル(Hot Nozzle) | マニホールドから金型キャビティまで樹脂を導く。先端にはヒーターと温度センサーがある。 |
| ヒーター | 樹脂が冷えないように温度を一定に保つ。 |
| 温度センサー(サーミスタ) | 温度制御装置と連携し、一定温度を維持。 |
ホットランナーの仕組み
-
成形機のシリンダから溶けた樹脂がホットランナーへ送られる
-
マニホールド・ノズル内のヒーターで加熱し続ける
-
樹脂が固まらないまま各キャビティへ流れる
-
成形後はゲート部分のみが固まり、製品だけを取り出す
→ ランナーが固まらないため、ランナーレス成形とも呼ばれます。
ホットランナーの種類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| オープンゲート方式 | ノズル先端がキャビティに直接つながる。構造が簡単で安価だが糸引きしやすい。 |
| バルブゲート方式 | ピンでゲートを開閉。糸引きが少なく、外観品質が高い。高精度品に向く。 |
ホットランナーのメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ① ランナー廃棄ゼロ | 材料ロスがないため、コスト削減に効果的。 |
| ② サイクルタイム短縮 | ランナー冷却・排出の時間が不要。 |
| ③ 成形圧力の安定 | 樹脂が冷えないので流動性が一定。寸法精度も安定。 |
| ④ 自動化しやすい | ランナー取出し作業が不要。完全自動成形が可能。 |
ホットランナーのデメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 金型コストが高い | 加熱配線・センサー制御などの構造が複雑。 |
| ② メンテナンスが大変 | ノズル詰まりや温度トラブル時の分解が難しい。 |
| ③ 色替えが難しい | 樹脂が残りやすく、カラーチェンジに時間がかかる。 |
| ④ 温度制御が重要 | 過熱や冷却ムラで樹脂劣化や糸引きが起きやすい。 |
適用例
| 用途 | 内容 |
|---|---|
| 多点取り金型 | 複数キャビティへの均等流動が容易。 |
| 大型製品 | 射出圧を下げられるため変形を抑制。 |
| 高外観品 | バルブゲートでゲート跡が目立ちにくい。 |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | ホットランナー(Hot Runner) |
| 目的 | ランナーを加熱し、樹脂を固めず流し続ける |
| メリット | 材料ロス削減、サイクル短縮、品質安定 |
| デメリット | 金型コスト高、保守難、色替えに不向き |
| 主な方式 | オープンゲート・バルブゲート |


コメント