ランナー(runner) とは、
射出成形において 溶けた樹脂をスプルーから各キャビティ(製品部)へ流す通路 のことです。
金型内で「樹脂の道」として機能します。
射出機 → ノズル → スプルー → ランナー → ゲート → キャビティ
という順番で樹脂が流れていきます。
ランナーの役割
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 樹脂を均等に分配 | 各キャビティへ同時に樹脂を届ける |
| 樹脂の圧力・温度を安定化 | 樹脂の流動抵抗や冷却のバランスを取る |
| 成形品質の安定化 | 各製品の充填・保圧が均一になるよう制御 |
| ゲートへの接続 | ゲートを通じて製品部へスムーズに流す |
ランナーの種類
ランナーには大きく分けて 2種類 あります👇
① コールドランナー(Cold Runner)
-
一般的な金型で最も多いタイプ
-
成形後、製品と一緒にランナーも固化して取り出される
特徴
-
構造がシンプル・金型コストが安い
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ただしランナー部の樹脂が廃棄またはリサイクルになる(材料ロス)
断面形状の例
| 形状 | 特徴 |
|---|---|
| 丸形(円形) | 流動性が良く、最も一般的 |
| 半円形 | 一方の金型側に配置しやすい |
| トラペゾイド形 | 金型加工が簡単で冷却性が高い |
② ホットランナー(Hot Runner)
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ランナー部を ヒーターで加熱して常に溶融状態 に保つ構造
-
成形後、ランナーが固まらず 樹脂ロスがゼロ になる
特徴
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材料ロスなし(高価な樹脂に有効)
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サイクル短縮・自動化に適している
-
ただし金型コストが高く、温度制御が必要
ランナー設計のポイント
ランナーは単なる「通路」ではなく、
樹脂の温度・圧力・流動を左右する重要な設計要素です。
| 設計要素 | 推奨・注意点 |
|---|---|
| 断面形状 | 円形または準円形が理想(摩擦損失が少ない) |
| 径(太さ) | 樹脂粘度・流動距離・製品サイズで決定(太すぎると冷却遅延) |
| 長さ | 各キャビティ間で均一にする(圧力差を減らす) |
| 配置(バランス) | 多点キャビティでは対称配置でバランス取りが重要 |
| 冷却速度 | 遅いとランナーのみ固化が遅れ、サイクル延長になる |
| 離型性 | 短いテーパー角やエジェクタピン配置でスムーズに取り出す |
ランナー設計と成形品質の関係
| 不良現象 | 原因(ランナー関係) |
|---|---|
| 充填ムラ | ランナー長さ・径の不均一 |
| ヤケ(ガス焼け) | バランス不良で空気閉じ込み |
| ウェルドライン強調 | ランナー径が太すぎて流速低下 |
| ショートショット | ランナー抵抗が大きすぎる |
| バリ | ランナー圧が高すぎる/ゲート過大 |
コールドランナーとホットランナーの比較
| 項目 | コールドランナー | ホットランナー |
|---|---|---|
| 構造 | シンプル | 複雑(ヒーター・温調付き) |
| 材料ロス | あり(ランナー廃棄) | なし(樹脂再利用) |
| 初期コスト | 低い | 高い |
| メンテナンス | 容易 | 難しい(熱制御必要) |
| サイクルタイム | やや長い | 短い(冷却部分少ない) |
| 成形安定性 | 一般的 | 高精度・高速向き |
| 適用例 | 汎用部品、試作 | 多点成形、高級樹脂、量産品 |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | ランナー(runner) |
| 位置 | スプルーとゲートの間にある樹脂流路 |
| 役割 | 樹脂をキャビティに均等に届ける |
| 主な種類 | コールドランナー・ホットランナー |
| 設計ポイント | バランス・断面形状・径・冷却性 |
| 関連不良 | 充填ムラ、ヤケ、ショートショット、ウェルドラインなど |


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