ヤケ」とは、
成形品の一部が黒く焦げたり、茶色〜銀色に変色する不良現象のことです。
見た目は「焦げ」「スス」「変色」といった形で現れます。
英語では burn mark(バーンマーク) と呼ばれます。
外観の特徴
| 種類 | 見た目 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 黒ヤケ | 黒〜褐色の焦げ跡 | ガス焼け、過熱 |
| 銀ヤケ(シルバーストリーク) | 銀色の筋・光沢ムラ | 含水ガス・空気巻き込み |
| 茶ヤケ | 茶色や濃い色ムラ | 材料の分解や熱履歴の影響 |
主な原因とメカニズム
ヤケの原因は大きく分けて3つあります👇
① ガス焼け(空気やガスの圧縮発熱)
-
樹脂がキャビティに充填される際、
空気の逃げ場(エアベント)がないと、
空気が樹脂に押し込まれ、高温・高圧で発火・酸化します。 -
その結果、焦げや黒ヤケが発生。
発生しやすい場所:
・最終充填部(流動の行き止まり)
・リブやボスなどの周辺
・薄肉部の端
② 材料の過熱・滞留
-
シリンダーやノズル内で樹脂が過度に加熱される
-
または**滞留(樹脂が長時間留まる)**ことにより、
樹脂が分解・酸化して焦げる
原因例:
-
シリンダー温度が高すぎる
-
バックフロー防止リングの摩耗で滞留
-
低射出速度による加熱時間増加
③ 水分や揮発分の影響(銀ヤケ)
-
吸湿樹脂(PA、PET、PCなど)の乾燥不足により、
溶融時に水蒸気が発生 → 樹脂内で気泡・白銀筋ができる -
外観は「白銀の筋」「光沢ムラ」に見えるが、
実質は水分由来のガスヤケです。
よくある発生例
| 発生箇所 | 原因の傾向 |
|---|---|
| ゲート反対側の端 | 空気の逃げ不足(ガス焼け) |
| リブ・ボス周辺 | エアベント不足、樹脂の衝突熱 |
| ショートショット寸前 | 圧縮された空気の発熱 |
| ノズル・スプルー近辺 | シリンダー内の滞留・過熱 |
| 広範囲に銀筋 | 吸湿・乾燥不足 |
対策方法
🔹 1. エアベント改善
-
最も重要な対策。
ガスの逃げ道(ベント)を確保する。 -
ベント深さ:0.02〜0.05mm程度(材料により異なる)
-
ベント位置:樹脂の行き止まり部、ヤケ発生部に追加
-
パーティングラインやエジェクタピン周辺に設けるのも効果的
🔹 2. 成形条件の見直し
| 項目 | 対策内容 |
|---|---|
| 射出速度 | やや低めにしてエア巻き込みを抑える(ただし充填不足に注意) |
| 保圧切替位置 | 早めにしてガス圧縮を減らす |
| シリンダ温度 | 適正化(特に後方ゾーンを少し下げる) |
| バックプレッシャー | 過度に上げない(過熱防止) |
| スクリュ回転数 | 過熱を防ぐため低めに設定 |
🔹 3. 材料管理
| 項目 | 対策内容 |
|---|---|
| 乾燥不足 | 吸湿性材料は十分に乾燥(温度・時間管理) |
| リサイクル材 | 焦げや分解物を含まないものを使用 |
| 滞留防止 | 長時間の温度保持を避ける/パージを行う |
🔹 4. 機械・金型の点検
| 項目 | 対策内容 |
|---|---|
| ノズル・スプルー | 滞留しやすい形状になっていないか確認 |
| バックフロー防止リング | 摩耗やカーボン付着で樹脂が焦げる場合あり |
| 金型温度 | 適正に保たれているか(過冷却部にガス滞留しやすい) |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 不良名 | ヤケ(焼け・バーンマーク) |
| 外観 | 黒・茶・銀の変色や焦げ跡 |
| 主原因 | 空気・ガスの圧縮発熱、材料の過熱・滞留、乾燥不足 |
| 発生箇所 | 流動の行き止まり、薄肉端部、リブ・ボス周辺 |
| 主な対策 | ベント改善、成形条件調整、乾燥強化、滞留防止 |
| 関連現象 | ショートショット、銀筋、焦げ臭、ガス抜き不良 |


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