メルトフローレート(MFR) とは、
熱可塑性樹脂を一定条件(温度と荷重)で溶かして押し出したときに、
10分間に流れ出る樹脂の質量(g/10min) を示す数値です。
つまり、
👉「溶融状態の樹脂がどのくらい流れやすいか(流動性)」
を数値で表した指標です。
測定方法(概要)
MFRは メルトインデクサー という装置で測定します。
測定の基本手順は以下の通りです👇
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樹脂(ペレットなど)をシリンダーに入れる
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試験条件に合わせた温度で加熱(例:PPなら230℃)
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一定の荷重(例:2.16 kg)をピストンにかけて溶融樹脂を押し出す
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ノズル先端から押し出された樹脂を一定時間(10分)採取
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その重さ(g)を測定し、g/10min として表示
単位と規格
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単位:g/10min
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試験規格:
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JIS K7210
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ASTM D1238
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これらの規格で、樹脂ごとの温度・荷重条件が細かく定められています。
MFR値の意味
| MFRの値 | 樹脂の状態 | 特徴 |
|---|---|---|
| 高い(例:30 g/10min) | よく流れる(低粘度) | 流動性が高く、薄肉や細かい形状に向くが強度低め |
| 低い(例:3 g/10min) | 流れにくい(高粘度) | 強度が高く、押出・ブローなどに向く |
👉 簡単に言うと:
MFR↑ → 流れやすい(分子量が小さい)
MFR↓ → 流れにくい(分子量が大きい)
MFRと分子量の関係
樹脂の「分子量」とMFRは反比例します。
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分子量が大きい → 分子同士が絡み合い、流れにくい(MFR小)
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分子量が小さい → 流れやすいが、強度や耐衝撃性が低下(MFR大)
つまり、MFR値を見れば、
その樹脂の「流動性」と「強度バランス」がある程度わかります。
射出成形におけるMFRの考え方
射出成形では、樹脂のMFRは製品形状や肉厚によって最適値が変わります。
| 製品の特徴 | 適したMFR値 | 理由 |
|---|---|---|
| 薄肉製品(例:電気部品のハウジング) | 高MFR(20〜50) | 流れやすく充填しやすい |
| 厚肉製品(例:ギア、構造部品) | 中〜低MFR(3〜10) | 強度・寸法安定性重視 |
| 精密部品(例:コネクタ) | 中MFR(10〜20) | 成形安定性と寸法精度のバランス |
| ブロー成形や押出 | 低MFR(0.5〜3) | 粘度が高く、膨張や伸びに強い |
MFRの使われ方
| 用途 | 目的 |
|---|---|
| 材料選定 | 成形性・用途に合わせて樹脂グレードを決定 |
| 品質管理 | ロットごとのMFRを測定し、安定性を確認 |
| 劣化判定 | 成形後のMFR上昇 → 熱分解で分子量低下の可能性 |
| 配合管理 | リサイクル材混入率の管理に利用(MFRが上昇傾向) |
注意点
| 注意項目 | 内容 |
|---|---|
| 乾燥不足 | 吸湿樹脂はMFRが誤って高く出ることがある(分解) |
| 測定温度の厳守 | ±1℃違っても結果が大きく変わる場合あり |
| ノズル清掃 | 詰まりがあるとMFRが低く出る |
| 比較条件 | 温度・荷重・時間条件が異なると比較できない |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | メルトフローレート(MFR) |
| 単位 | g/10min |
| 測定装置 | メルトインデクサー |
| 意味 | 熱可塑性樹脂の溶融流動性(粘度)を数値化 |
| 関係性 | MFR↑=低粘度(流れやすい)/MFR↓=高粘度(流れにくい) |
| 主な用途 | 材料選定・品質管理・分子量推定 |
| 射出成形での目安 | 一般的に5〜30 g/10min程度が使いやすい範囲 |


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