「非結晶性樹脂」とは、分子が規則正しく並ばず、ランダムに絡み合った構造をもつプラスチックのことです。
対になるのが「結晶性樹脂」で、こちらは分子が整然と並んで結晶構造を作ります。
構造的な特徴
| 項目 | 非結晶性樹脂 | 結晶性樹脂 |
|---|---|---|
| 分子構造 | 無秩序(ランダム) | 規則的(整列) |
| 透明性 | 高い(光を通す) | 低い(白濁する) |
| 熱変形温度 | 明確な「ガラス転移点」がある | 「融点」がある |
| 成形収縮率 | 小さい | 大きい |
| 寸法精度 | 出やすい | やや劣る |
| 耐薬品性 | 弱い傾向 | 強い傾向 |
代表的な非結晶性樹脂の例
| 樹脂名 | 略称 | 特徴 |
|---|---|---|
| ポリスチレン | PS | 安価・透明・硬いが衝撃に弱い |
| ポリカーボネート | PC | 高強度・透明・耐熱性良好 |
| アクリル(ポリメチルメタクリレート) | PMMA | 高透明度・耐候性良好 |
| ABS樹脂 | ABS | 衝撃強い・加工性良い |
| ポリ塩化ビニル | PVC | 難燃性良好・電気特性良好 |
| ポリエーテルイミド | PEI | 高耐熱性・機械強度高い |
熱的性質
-
融点がない
→ 結晶構造がないため、明確に「溶ける温度」は存在しません。
代わりに「ガラス転移点(Tg)」があり、これを超えると柔らかくなります。 -
冷却時の収縮が少ない
→ 成形品の寸法安定性が高いので、精密部品に向いています。
成形上の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成形温度 | Tgより十分高く設定する必要あり |
| 金型温度 | 比較的低め(40〜80℃程度) |
| 成形収縮 | 小さい(0.3〜0.7%程度) |
| 透明成形 | 可能(曇りにくい) |
| クラック | 応力集中で「クレージング」や「応力割れ」起こしやすい |
| 乾燥 | 一部の樹脂(PC、PMMAなど)は吸湿性があり、成形前に乾燥が必要 |
用途例
-
透明カバー(PC、PMMA)
-
光学レンズ
-
家電筐体(ABS)
-
医療用容器
-
自動車メーターパネル など
まとめ
| 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 無秩序構造 | 透明性が高い | 耐薬品性や耐摩耗性が低め |
| 収縮少 | 寸法精度が高い | 応力割れしやすい |
| Tgあり | 熱変形制御が容易 | 高温では急激に柔らかくなる |


コメント