内部応力(residual stress) とは、成形品の 外部からの力が加わっていない状態でも、材料内部に残っている応力 のことです。
射出成形では、冷却・収縮・充填などの工程で樹脂分子が不均一に配列するため、成形品内部に応力が残ります。
内部応力が発生する原因
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冷却の不均一
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厚肉部と薄肉部で冷却速度が異なる → 収縮差 → 内部応力
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射出圧力や速度の不均一
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高圧で充填された部分と低圧部分で応力が残る
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ゲート・ランナー位置
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樹脂の流れ方向や充填タイミングによる応力集中
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結晶化や配向
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半結晶性樹脂では分子の配向による収縮差で応力が発生
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内部応力の影響
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そり・変形
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製品が金型から離れた後に反り返る
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寸法変化
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精密部品で誤差が発生
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割れ・クラック
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環境応力割れ(ESC)の原因
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接着・塗装不良
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内部応力が表面処理や接着に影響
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内部応力の測定方法
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ひずみゲージ法:局所のひずみを計測
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屈折法(光学応力測定):透明樹脂に応力分布を観察
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ねじり法や切断法:切断したときの変形から推定
内部応力の低減方法
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均一な冷却
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金型冷却ラインの最適化
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射出条件の最適化
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適正速度・圧力・保圧の設定
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製品設計
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肉厚を均一にする
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リブや段差を工夫して応力集中を避ける
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アニーリング(応力除去熱処理)
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成形後に一定温度で加熱して内部応力を緩和
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まとめ
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内部応力 = 樹脂内部に残る応力
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原因:冷却差・圧力差・分子配向など
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影響:そり、寸法変化、割れ、接着不良
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対策:均一冷却・成形条件最適化・アニーリング・設計改善
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