耐薬品性(chemical resistance) とは、材料(プラスチック・ゴム・金属など)が 酸・アルカリ・有機溶剤・油などの化学薬品にさらされたときに、物性や外観が劣化しにくい性質 を指します。
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プラスチックでは、薬品によって 膨潤・ひび割れ・溶解・変色 が起こる場合があるため、用途に応じた樹脂選定が重要です。
劣化の種類
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膨潤:薬品を吸収して体積が膨らむ
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溶解:樹脂自体が溶けてしまう
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応力割れ(ESC: Environmental Stress Cracking)
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外力と薬品が組み合わさって亀裂が入る
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化学分解:酸やアルカリで分子鎖が切断される
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変色・表面劣化:外観品質の低下
耐薬品性に優れるプラスチック
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フッ素樹脂(PTFE, PFA, FEP, PVDF)
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酸・アルカリ・有機溶剤すべてに強い
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PE(ポリエチレン, HDPE, UHMW-PE)
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酸・アルカリに強い、安価で広く利用
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PP(ポリプロピレン)
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酸・アルカリに良好、化学容器や配管に使用
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PPS, PEEK
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高温環境でも耐薬品性を維持
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耐薬品性が弱いプラスチック
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PC(ポリカーボネート)
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有機溶剤に弱く、応力割れしやすい
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ABS樹脂
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酸や溶剤に侵されやすい
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ナイロン(PA)
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酸や塩基で加水分解しやすい
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評価方法
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浸漬試験
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薬品に一定時間浸して重量変化・寸法変化を測定
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引張・曲げ試験
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薬品曝露後に機械的強度がどの程度残るかを確認
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応力割れ試験(ESC試験)
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応力をかけた状態で薬品にさらして亀裂の有無を観察
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主な用途
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化学薬品タンク・配管(PP, PE, PVDF, PTFE)
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医療器具・分析機器(PEEK, PTFE, PP)
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自動車の燃料系部品(PPS, PBT)
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半導体製造装置(フッ素樹脂、PFA, PVDF)
まとめ
耐薬品性とは、
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薬品環境下で劣化や破壊を起こさない性質
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フッ素樹脂やPE、PPが特に優秀
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PCやABSなどは薬品に弱い
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実使用条件(温度・濃度・応力)を考慮した評価が不可欠
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