耐食性(corrosion resistance) とは、材料が 化学的・電気化学的作用による腐食を受けにくい性質 を指します。
腐食とは、金属や樹脂が環境中の水分・酸素・化学薬品などと反応して劣化する現象です。
-
金属の場合 → 錆(酸化)、電気化学的腐食 が代表例
-
プラスチックの場合 → 薬品・溶剤・酸・アルカリ による分解・劣化が中心
耐食性に影響する要因
-
材料の種類
-
ステンレス鋼、チタン、アルミは比較的耐食性が高い
-
鉄や銅は錆や腐食が進みやすい
-
フッ素樹脂(PTFE)、PEEK などの高機能樹脂は薬品に強い
-
-
環境条件
-
湿度、温度、pH、塩分濃度
-
海岸地帯や化学プラントは腐食環境が厳しい
-
-
表面処理やコーティング
-
メッキ、塗装、陽極酸化などで耐食性を向上可能
-
耐食性の評価方法
-
塩水噴霧試験(JIS Z 2371, ASTM B117)
-
塩水ミストを吹きかけて錆の発生を観察
-
-
浸漬試験
-
酸・アルカリ・溶剤に一定時間浸して重量変化や外観を確認
-
-
電気化学的測定
-
分極曲線、腐食電流を測定して耐食性を定量評価
-
耐食性に優れる材料
-
金属系
-
ステンレス鋼(SUS304, SUS316)
-
チタン、アルミ合金
-
-
樹脂系
-
フッ素樹脂(PTFE, FEP, PFA)
-
PEEK、PPS、PVC(塩ビ)など
-
主な用途
-
化学プラントの配管・タンク
-
船舶・海洋構造物
-
食品機械や医療機器(錆びにくさが必須)
-
電気・電子部品の筐体や絶縁体
まとめ
耐食性とは、
-
環境中での腐食や劣化を受けにくい性質
-
材料の種類・環境・表面処理で大きく変わる
-
金属では錆対策、樹脂では薬品劣化対策が中心
耐食性の高いプラスチック一覧
材料名 | 特徴 | 耐食性に優れる点 | 主な用途 |
---|---|---|---|
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン) | いわゆるテフロン。非粘着性・耐熱性も抜群 | ほとんどの薬品に不活性。酸・アルカリ・溶剤すべてに強い | 化学プラント配管、ガスケット、ライニング、半導体装置 |
PFA / FEP(フッ素樹脂系) | PTFEに近いが、成形性が良い | 強酸・強アルカリに耐える。半導体洗浄薬品でも使用可 | 半導体装置部材、薬品タンク、ホース |
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン) | スーパーエンジニアリングプラスチック | 高温下でも耐薬品性を維持。特に有機溶剤や塩類に強い | 石油化学、航空機部品、医療用デバイス |
PPS(ポリフェニレンサルファイド) | 耐熱性と寸法安定性が高い | 酸・アルカリ・塩溶液に強い。金属代替に使用される | 電気電子部品、ポンプ・バルブ部材、自動車部品 |
PVC(ポリ塩化ビニル) | 安価で加工しやすい | 酸・アルカリに強く、耐食配管材として普及 | 配管、ダクト、薬液タンク |
PE(ポリエチレン, HDPE, UHMW-PE) | 軽量で安価、耐衝撃性が高い | 多くの薬品に対して安定。特に酸・アルカリに強い | タンク、コンテナ、薬品容器 |
PP(ポリプロピレン) | 軽量・成形性良好 | 酸・アルカリに強く、薬品保存容器として一般的 | 容器、ラボ器具、配管 |
PVDF(ポリフッ化ビニリデン) | フッ素樹脂の一種で加工しやすい | 酸・アルカリ・溶剤に強い。フッ素樹脂の中では比較的扱いやすい | 化学装置、ライニング、フィルター |
ポイント整理
-
最強クラス:PTFE、PFA → 化学的にほぼ不活性
-
高性能で実用性高い:PEEK、PPS、PVDF → 高温・高強度・耐薬品を両立
-
コストと実用性のバランス:PVC、PP、PE → 配管や容器に広く普及
コメント