射出速度(Injection Speed)は、射出成形においてスクリューが前進して樹脂を金型へ充填する際の移動速度を指します。
簡単に言うと、樹脂を金型に流し込む速さのことです。
射出速度の役割
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充填状態の制御
・速い → 金型の隅々まで届きやすい、転写性向上
・遅い → 樹脂が途中で冷えてショートショットになりやすい -
外観品質への影響
・速すぎる → フラッシュ(バリ)、焼け(ディーゼル効果)、ウェルド強度低下、シルバーストリークなどの外観不良
・遅すぎる → ヒケ、充填不足、転写不良 -
内部応力のコントロール
射出速度が速いと樹脂が急激にせん断され、分子配向や残留応力が大きくなる。
射出速度の設定方法
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ステップ制御が基本
樹脂の充填過程を「複数段階」に分けて射出速度を切り替えるのが一般的です。
例:
1段目:高速 → ゲートを通過してキャビティに充填しやすくする
2段目:中速 → キャビティの大部分を充填
3段目:低速 → 最後の微細部を樹脂焼けやバリを抑えて埋める -
樹脂と製品形状で変える
薄肉・長流動 → 高速射出
厚肉・光学製品 → 低速射出で応力を抑制
射出圧力との関係
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成形機は「射出速度制御」を優先します。
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ただし、速度を維持するために必要な力が「射出圧力」として発生します。
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設定速度が高すぎると、成形機の圧力上限に達して速度が出ない(=圧力制御状態になる)こともあります。
まとめ
射出速度は 「どれくらいの速さで金型に樹脂を流し込むか」 を決める条件で、
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製品の外観
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転写性
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内部応力
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成形サイクル
に大きな影響を与える重要なパラメータです。
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