「コールドスラッグ(Cold Slug)」とは、ノズル先端やスプルー先端などで冷えて固まりかけた樹脂が、射出時に最初に金型内へ流れ込むことで発生する“冷えた異物状の樹脂”を指します。
この冷えた樹脂は完全に溶融しておらず、流動性や接着性が低いため、製品に混入すると外観不良や機械的欠陥の原因になります。
コールドスラッグとは?
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射出成形において、ノズルやスプルーの先端に停滞して冷却された樹脂
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成形サイクルの合間に冷えてしまい、次のショットで最初に押し出される
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溶融状態の樹脂と温度差があり、ウェルドライン・未溶融粒・光沢不良などを引き起こす
発生原因
原因 | 説明 |
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ノズル先端が冷える | 射出の合間に冷却され、樹脂が部分的に固化 |
材料の熱伝導率が低い | 冷えやすく、保温が難しい |
保温やパージ不足 | 射出間隔が長いとノズル先端温度が低下 |
金型内のコールドスラッグウェルがない | 冷えた樹脂を逃がす構造がなく、製品に入り込む |
コールドスラッグによる成形不良
不良名 | 原因・影響 |
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異物混入 | 製品内に固まりかけた樹脂が入り、見た目や強度に悪影響 |
ウェルドラインの発生 | 冷えた樹脂が他の樹脂と合流して溶け合わず、ライン状の跡に |
光沢不良・銀条 | 表面に筋状の模様(スラッグマーク)が出ることがある |
ショートショット | スラッグが流動抵抗となり、樹脂が行き届かない場合もある |
対策方法
1. コールドスラッグウェルの設置
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金型のゲート付近に冷えた樹脂だけを逃がすための溝(ウェル)を設ける
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スラッグはここに溜まり、製品には流れ込まないようにする
2. ノズル温度の管理
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ノズルヒーターで一定温度を保つ
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材料に応じて設定温度を最適化
3. ショット間隔の短縮
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成形サイクルを早め、ノズル内の樹脂が冷える時間を短くする
4. パージ操作
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停止時間が長い場合や材料交換時は、パージしてノズル内の古い樹脂を除去
コールドスラッグウェルの設計例
項目 | 内容 |
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位置 | ゲート直前(スプルーやランナー先端部)に配置 |
深さ | 製品の肉厚よりやや深め(1.5~2倍程度) |
形状 | 丸形・ポケット形など(流動を邪魔しない構造) |
まとめ
項目 | 内容 |
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定義 | 射出成形時、冷えて固まった樹脂が最初に流れ込むことで発生する異物 |
発生原因 | ノズル冷却、長い待機時間、金型設計不備など |
影響 | 外観不良、強度低下、ウェルドラインなど |
対策 | コールドスラッグウェル設計、ノズル温度管理、パージ、サイクル最適化など |
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