「ゲートシール時間(Gate Seal Time)」とは、射出成形中にキャビティへ流れ込んだ溶融樹脂が、ゲート部分で完全に固化し、キャビティとランナーが“遮断されるまでの時間”を意味します。
ゲートシール時間とは?
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ゲート内の樹脂が冷えて固まり、通路が塞がれる(シールされる)までの時間
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この時間までは、保圧の圧力がキャビティ内に有効に作用します
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ゲートが固まった後は、保圧しても樹脂は流れ込まない=無意味になる
なぜ重要なのか?
目的・役割 | 説明 |
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✅ 保圧の有効時間の目安 | 保圧が効いているのは、ゲートシール時間までです |
✅ ヒケ・密度の改善 | シール前までに保圧を適用することで、ヒケや収縮を抑えられる |
✅ 成形サイクル最適化 | 保圧を長くしすぎると無駄なサイクル時間となる。短すぎると不良の原因に |
ゲートシール時間の測定方法(実務的手順)
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射出条件を一定にして複数ショット成形
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保圧時間だけを1秒ずつ長くしていく
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各ショットの製品重量を正確に測定
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重量が一定になるポイント=ゲートシール完了時間
📌 この重量の頭打ちになるタイミングが、保圧が効かなくなった=ゲートシール完了の合図
ゲートシール時間に影響を与える要因
要因 | 影響内容 |
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ゲートの形状・サイズ | 小さいほど冷えが早く、シール時間も短い |
金型温度 | 低いほど早く冷えてシールされやすい |
樹脂の種類 | 熱伝導率や粘度の違いでシール時間が異なる |
成形品の肉厚 | 樹脂の圧力保持が必要な時間が長くなるほど、シール時間も必要 |
ゲートシール時間が短すぎると?
問題 | 説明 |
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ヒケ・ボイド | 保圧が十分に効かず、収縮が起こる |
密度不足 | 製品がスカスカになり、強度が低下 |
寸法不良 | 製品が設計値より小さくなる可能性 |
ゲートシール時間が長すぎると?
問題 | 説明 |
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サイクルタイムの無駄 | シール後に保圧しても意味がない=生産性が低下 |
過保圧によるバリ | 金型合わせ面などから樹脂が漏れる可能性 |
実用上の目安(一般的な数値)
材料例 | ゲートシール時間の目安(参考) |
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PP(ポリプロピレン) | 2~5秒 |
PC(ポリカーボネート) | 3~7秒 |
ABS | 1.5~4秒 |
ナイロン(PA) | 2~6秒 |
※ ゲートサイズ・金型温度・射出条件により大きく変動します |
実務アドバイス
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ゲートシール時間は保圧時間設定の「最小限値」を決める上で最重要
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保圧時間はゲートシール時間+0.5秒程度を目安にすることが多い
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成形条件を変えた場合(温度・圧力・速度など)は再確認が必要
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シール後に圧力をかけ続けても圧力が抜けるだけで意味がない
まとめ
項目 | 内容 |
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定義 | ゲートが冷えて固まり、保圧が届かなくなるまでの時間 |
測定方法 | 保圧時間と製品重量の関係で判断 |
管理目的 | 適正な保圧設定・ヒケ抑制・サイクル最適化 |
応用 | 射出成形の不良低減・時短・品質安定に直結する重要項目 |
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