クラック(crack)」とは、成形品に発生する亀裂や割れを指します。見た目にはヒビや割れ線として現れ、機能面・外観面の両方で重大な不良になります。
クラックとは?
クラックの種類と原因
種類 |
主な原因 |
備考 |
成形直後のクラック |
射出条件(圧力、速度)、金型温度、金型構造 |
溶融樹脂の急激な収縮や応力集中による |
遅れクラック(環境応力亀裂) |
応力+薬品・水分・紫外線など |
特に透明樹脂(PC、PMMA)で起こりやすい |
エジェクトクラック |
脱型時のピン圧力・バランス不良 |
ピン圧が集中し割れる、金型の設計ミス |
溶着部のクラック |
ウェルドラインや溶着部の強度不足 |
多点ゲート、薄肉部分などで発生しやすい |
主な発生原因と対策
🔥 1. 成形条件の不適切
原因 |
対策 |
射出圧力・速度が高すぎ |
適正な値に下げて応力を抑える |
金型温度が低すぎ |
適正温度に上げて溶融樹脂の流動性改善 |
保圧時間・圧力が過剰 |
応力過多 → 最小限に調整 |
🧊 2. 冷却不良・急激な温度差
原因 |
対策 |
肉厚差による不均一収縮 |
肉厚の均一化、R面追加など |
冷却回路の設計ミス |
金型内部の冷却バランスを見直す |
🧪 3. 材料起因
原因 |
対策 |
吸水した材料(ナイロンなど) |
成形前にしっかり乾燥(80~120℃ 4〜8時間など) |
グレード不適合 |
耐衝撃性・耐薬品性のあるグレードへ変更 |
🛑 4. 金型設計不良
原因 |
対策 |
エジェクタピン位置・数が不適切 |
荷重分散するように配置見直し |
ゲート位置・流動設計不良 |
ウェルドラインが応力集中しないよう最適化 |
クラックが起こりやすい材料例
材料 |
傾向 |
PC(ポリカーボネート) |
環境応力割れに非常に弱い(洗剤やアルコールでも割れる) |
PMMA(アクリル) |
外観重視されるが衝撃・応力に弱い |
ナイロン(PA) |
吸水により後日ひび割れることも |
PS(ポリスチレン) |
衝撃に弱く、成形応力が残りやすい |
クラックの検出方法
方法 |
説明 |
目視検査 |
最も基本。透明樹脂では特に有効 |
拡大検査(ルーペ・顕微鏡) |
微細なクラックの確認 |
試験(曲げ・衝撃) |
遅れクラックや応力集中箇所の再現試験 |
クラック防止の基本対策まとめ
項目 |
対策 |
成形条件 |
過剰な圧力・速度・冷却を避け、ストレスの少ない条件に |
材料管理 |
乾燥・保管・吸水管理の徹底 |
金型設計 |
応力集中を防ぐ形状とエジェクタ設計 |
使用環境 |
製品用途に応じて薬品・熱・紫外線への対策も検討 |
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