「クッション量(Cushion、クッションポジション)」とは、保圧工程終了後にスクリュー先端とノズルの間に残っている溶融樹脂の量(またはスクリューの残りストローク量)を指します。
簡単に言えば、「保圧が終わった時点でスクリューが前進しきらずに少し残っている状態」です。
クッション量とは?
✅ 定義(主に2通りの意味で使われます):
表現 | 内容 |
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スクリューポジションでの「クッション量」 | 保圧終了時のスクリューの残り位置(mm単位) |
溶融樹脂の体積での「クッション量」 | 保圧終了時点でノズル先端に残る樹脂の体積(cm³など) |
クッション量の目的と役割
目的 | 説明 |
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✅ 保圧の確実な伝達 | 樹脂を押し切ってしまうと、保圧がかからなくなる(空打ち) |
✅ バックフローの防止 | チェックリングの閉止が甘くなるのを防ぐための“逃げ代” |
✅ 成形品の安定化 | ショートショット・バリ・ヒケの安定化につながる |
✅ 吐出量のモニタ | クッション量の変化は射出条件や材料異常の指標になる |
適正なクッション量の目安
一般的には:
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2~5mm程度(スクリューストロークで)
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使用する機械・樹脂・製品サイズにより調整
条件 | クッション量の目安 |
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小型製品・短射出 | 1~3mm |
中~大型製品 | 3~6mm |
ガス抜け・高精度用途 | 最小限に(1mm台) |
反対に全くゼロはNG | → 空打ち、チャタリング、保圧抜けの恐れあり |
クッション量が多すぎると?
問題 | 内容 |
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過充填・バリ | 圧力過多で金型の合わせ面から漏れる |
残圧過剰 | ノズル閉塞や次ショットへの影響 |
サイクルタイム増加 | 不必要なスクリュー前進が長くなる |
クッション量が少なすぎると?
問題 | 内容 |
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ショートショット | 樹脂不足で成形品が不完全に |
保圧抜け | スクリューが前に押し切って、保圧が効かなくなる |
チェックリングの誤作動 | 逆流の原因に(リングが閉まりきらない) |
クッション量の確認方法
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成形機のスクリューポジション(位置表示)を保圧終了時に確認
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実際に計量開始時点と比較して、移動距離と照らし合わせる
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不良が出た場合はまずここを確認することが多い
クッション量と射出の安定性の関係
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クッション量が安定していない → 成形不良の兆候(漏れ、摩耗、逆流)
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クッション量を定量的に管理することで、射出成形の繰り返し精度が大幅に改善
まとめ
観点 | ポイント |
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目的 | 保圧伝達のための“残り代” |
通常値 | 2~5mm前後(樹脂や機械により調整) |
少なすぎNG | 保圧が抜けてショートショットに |
多すぎNG | バリ・材料ロス・サイクルタイム悪化 |
管理 | スクリューポジションと成形品の状態を両方見るのが基本 |
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