吸水

吸水(きゅうすい / moisture absorption)」とは、樹脂材料が空気中の水分(湿気)を吸収する現象を指します。多くの熱可塑性樹脂は吸水性を持ち、吸収された水分が成形や製品性能に悪影響を与えることがあります。

吸水とは?

  • 空気中の湿度や水分を材料が取り込む現象

  • 特に親水性の高い樹脂(ナイロンなど)は水分をよく吸う

  • 樹脂の種類により吸水しやすさ(吸水率)が異なる

主な吸水性のある樹脂と吸水率(参考値)

樹脂名 吸水性 吸水率(%)
ナイロン(PA6, PA66) 非常に高い 1.5~3.0%
PBT(ポリブチレンテレフタレート) 中程度 約0.2~0.5%
ABS 低い 約0.2%
PP(ポリプロピレン) ほぼなし 0.01%以下
PC(ポリカーボネート) やや高め 約0.3~0.5%
PMMA(アクリル) 中程度 約0.3%

吸水による悪影響(成形・品質上)

問題 原因・説明
シルバーストリーク(銀条) 水分が高温で蒸発し、気泡や白筋になる
寸法不安定 成形後も吸湿によって寸法が変化(特にナイロン)
強度低下・脆化 水分の影響で分子間結合が乱れたり、加水分解が進む
ガス焼け・焦げ 高温で水が分解し、焦げ・変色が発生
射出時の圧縮性増加 溶融中にスチームバブルができ、圧力ロス・充填不足の原因に

吸水対策(重要!)

✅ 1. 乾燥(ドライヤー)処理

  • 成形前に専用乾燥機で予備乾燥(温風・真空・除湿式)

  • 樹脂に応じた温度と時間設定が必要

| 例:ナイロン(PA66) → 80~90℃で4~8時間乾燥 |

✅ 2. 保管管理

  • 樹脂は開封後すぐ使用、未使用品は密閉保存

  • 湿度が高い時期(梅雨など)は特に注意

✅ 3. 成形条件調整

  • 吸水の影響で成形条件が不安定になるため、乾燥済み樹脂前提で条件出しが必要

補足:吸水と吸湿の違い

用語 意味
吸水(Water absorption) 水分子が材料内部に侵入して結合する(樹脂構造に影響)
吸湿(Moisture absorption) 空気中の水蒸気を表面または浅い層で保持する現象(比較的弱い)

最後に:吸水性が問題になりやすい製品例

  • 自動車部品(高強度・耐環境性が求められる)

  • 電子部品(寸法精度や絶縁性が重要)

  • 食品・医療容器(衛生・安定性が必要)

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