「キュア(Cure)」とは、主に熱硬化性樹脂やゴムなどで使用される用語で、「化学反応によって材料が硬化・固化する工程」を指します。射出成形で使われる熱可塑性樹脂には基本的に該当しませんが、熱硬化性樹脂や液状シリコーン(LSR)、ゴム射出成形では重要な工程です。
キュア(Cure)とは?
定義:
熱や時間、圧力を加えることで、材料内部で架橋反応(化学反応)が起こり、最終的に硬化・安定化すること。
射出成形におけるキュアの適用分野
材料種別 | キュアの必要性 | 備考 |
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熱可塑性樹脂(PP、ABSなど) | ❌ 不要 | 冷却による物理的固化のみ |
熱硬化性樹脂(フェノール、メラミンなど) | ✅ 必須 | キュアにより初めて形状が確定 |
液状シリコーンゴム(LSR) | ✅ 必須 | 成形後の加熱により硬化 |
ゴム成形 | ✅ 必須 | 硫黄などによる加硫反応(これもキュアの一種) |
キュアのプロセス(例:熱硬化性樹脂)
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充填
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溶融状態でキャビティに流し込む。
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加圧保持
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所定の圧力でキャビティ内に保持。
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キュア(硬化)
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金型加熱(120~200℃程度)により化学反応が進行。
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冷却・取り出し
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完全に硬化・化学反応が終わった状態で製品を取り出す。
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キュアとサイクルタイムの関係
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熱硬化性の場合、「キュア時間が成形サイクルのボトルネック」になることが多い。
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キュア時間が不十分だと:
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製品表面は固くても、内部は未硬化(under-cure)
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キュア時間が長すぎると:
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オーバーキュア(過硬化)による脆化や分解の恐れ
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管理のポイント
項目 | 説明 |
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金型温度 | 一定以上で化学反応を促進(温度が低すぎると硬化不良) |
保圧時間 | 硬化が進むまでの成形圧力維持が必要 |
材料のポットライフ | 可使時間内に成形を完了させる必要あり |
硬化度の検査 | 成形後のショア硬度や赤外線分析で確認する場合あり |
キュアが関わる代表的な成形法
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熱硬化性射出成形(BMC、フェノール系)
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LSR成形(液状シリコーンラバー)
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ゴム射出成形(加硫工程を含む)
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CFRP成形(プリプレグを用いた加熱硬化) → 特殊用途
用語の補足
用語 | 意味 |
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キュアサイクル | 時間・温度・圧力の組み合わせによる硬化工程 |
ポストキュア | 成形後、さらに炉などで二次硬化する処理(精密部品や高耐熱要求時) |
加硫(バルカナイゼーション) | ゴムのキュア工程の一種(硫黄架橋) |
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