キャビ内圧(キャビないあつ、Cavity Pressure)とは、成形中にキャビティ内部にかかる圧力のことを指します。これは製品の品質・寸法安定・成形不良防止に大きく関わる重要な管理指標です。
キャビ内圧の概要
✅ 定義:
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成形サイクル中に溶融樹脂がキャビティに充填される際に発生する圧力。
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通常、金型内にセンサーを設置して測定します。
キャビ内圧の推移(圧力カーブ)
キャビ内圧は、射出成形の以下の工程に応じて変化します:
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射出充填初期(低圧)
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樹脂がまだ一部しかキャビティに入っていない
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充填完了直前(圧力急上昇)
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空間が少なくなり抵抗が増えるため
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保圧工程(最大圧力)
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樹脂が固まり始め、圧力は一時的に高く安定
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冷却固化(圧力低下)
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樹脂が固まって体積変化がなくなり、圧力も下がる
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このキャビ内圧カーブは「成形品の状態を可視化」する重要なデータとなります。
なぜキャビ内圧が重要なのか?
管理目的 | 内容 |
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✅ 充填状態の確認 | 充填不足・過充填の検出が可能 |
✅ 品質の安定化 | キャビ内圧を一定に保つことで、寸法バラつきを抑制 |
✅ 成形不良の予知 | ヒケ、バリ、ウェルドラインなどの兆候を早期に察知 |
✅ 成形条件の最適化 | 射出速度、切換点、保圧時間などの適正化に利用 |
測定方法・センサーの設置場所
方法 | 説明 |
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キャビティ内センサー | 成形品の中央や端に圧力センサーを埋め込む(一般的) |
ノズル圧力から推定 | 簡易的だが実キャビ内圧とは差がある |
スクリュー位置+圧力で間接計測 | 簡易的に波形推定(精度はやや劣る) |
よくあるトラブルとキャビ内圧の関係
トラブル | キャビ内圧の特徴 |
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ヒケ・空洞 | 保圧中のキャビ内圧が低い or 時間が短い |
バリ | キャビ内圧が過剰に高く、合わせ面から樹脂漏れ |
寸法不良 | 射出→保圧切替の圧力変動が大きい |
ショートショット | キャビ内圧が十分に上がらず充填不足 |
実際の使い方(例)
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切換位置(V→P点)をキャビ内圧が上がり始めた瞬間に設定することで、安定成形が可能になります。
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成形品ごとに圧力波形を記録して不良品の自動選別をするシステムもあります。
応用:キャビ内圧によるフィードバック制御(自動成形)
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リアルタイムでキャビ内圧をモニタリングし、条件を自動補正する高度な射出成形機も存在します。
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たとえば:
→ 圧力が上がらない=充填不足 → 保圧時間延長
→ 圧力が高すぎる=過充填 → 射出速度低下
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