射出成形における逆流防止機構(Backflow Prevention Mechanism)は、主に可塑化工程中に溶融樹脂がスクリューの後方へ逆流するのを防ぐための装置です。これは計量の精度・成形品の品質安定に大きく関わる重要な機構です。
射出成形における逆流防止機構とは?
射出成形機では、スクリューが前後に動くことで「計量」「射出」「保圧」などを行います。この時、スクリュー先端にある逆流防止機構(通称:チェックリング、逆止弁)が、溶融樹脂がスクリュー後方へ戻るのを防ぎます。
代表的な構造
1. チェックリング(Check Ring)方式
射出成形で最も一般的な逆流防止構造。構成は以下の3部品:
部品名 | 機能 |
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チェックリング(リング) | スプリングのない金属の輪で、射出時に前方に動いて逆流を防ぐ |
シート(座金) | チェックリングが密着する面。逆流を遮断する |
ストップカラー(カラー) | チェックリングの後ろに位置し、計量時の戻りを制限 |
2. フローティングチェックバルブ(Floating Type)
・リングが自由に動くタイプで、流量が変動しやすい成形に向いています。
・摩耗しやすいが反応が早い。
3. ボール型チェックバルブ
・一部の特殊成形機で使用される。
・樹脂の粘度が低い材料(LCPなど)に用いられることがあります。
逆流防止機構の動作タイミング
工程 | 状態 |
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計量中(スクリュー回転) | チェックリングは開いた状態 → 溶融樹脂が前方へ流れる |
射出・保圧中(スクリュー前進) | チェックリングがシートに押し付けられ閉じる → 逆流を防止 |
不良やトラブル事例(逆流防止が不完全な場合)
問題 | 原因 |
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射出量バラつき | チェックリングの摩耗、樹脂リークによる逆流 |
ショートショット | 射出時に必要量がノズルから出ない(逆流でロス) |
ウェルドライン強度不足 | 計量量が不安定で圧力が足りない |
保圧不足によるヒケ | 逆流により保圧力が逃げてしまう |
メンテナンスと注意点
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摩耗チェック:リングやシートの摩耗は逆流の大きな原因
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樹脂に応じた選定:ガラス繊維入りなどの強化材は摩耗が早い
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洗浄時の取り扱い注意:無理にリングを動かすと変形の恐れあり
補足:逆流防止以外の手段(補助的)
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バルブノズル:ノズル側で流れを制御する可動ノズル
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バックプレッシャー調整:計量時に適切な圧をかけて逆流を抑える
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