射出成形機において、樹脂を加熱・溶融・混練するための円筒形の部品です。
「バレル(barrel)」とも呼ばれます。
この中にスクリュー(ねじ)が入っており、ペレット状の樹脂が可塑化される場所になります。
構造の概要
-
外筒(シリンダ)
厚みのある鋼製の筒。内部にスクリューが通っています。 -
ヒーター(バンドヒーター)
シリンダ外周に取り付けられた加熱装置。温度制御を行います。 -
熱電対(温度センサー)
各ゾーンの温度を監視して、加熱制御に使用。 -
ゾーン分割
通常、シリンダは3〜5ゾーンに分かれており、それぞれのゾーンで温度を個別制御します。
可塑化シリンダの役割
工程 | 説明 |
---|---|
① 加熱 | ヒーターとスクリューの摩擦熱で樹脂を溶かす |
② 混練 | スクリュー回転により、樹脂を均一に混ぜる |
③ 脱泡 | ガス・水分を飛ばす(バックプレッシャー併用) |
④ 蓄圧 | 射出前に、スクリュー先端に溶融樹脂をためる |
材質
-
高温・高圧・摩耗に強い材質が使われます。
-
よく使われる素材:
-
窒化処理鋼(例:SACM645)
-
バイメタルシリンダ(内面に耐摩耗・耐腐食コーティング)
-
よくあるゾーン構成と温度設定例
ゾーン名 | 位置 | 役割 | 温度例(ABSの場合) |
---|---|---|---|
フィードゾーン | ホッパー近く | 樹脂供給開始 | 約190〜210℃ |
コンプレッションゾーン | 中間 | 加熱と混練 | 約210〜230℃ |
メータリングゾーン | ノズル側 | 均一化と仕上げ | 約220〜240℃ |
不具合やトラブル例
トラブル | 原因 | 対処法 |
---|---|---|
シリンダ内で樹脂が焦げる | ヒーター温度が高すぎる、滞留時間が長い | 温度見直し、排出・清掃 |
材料の可塑化不良 | 温度不足、回転数不適 | スクリュー速度や温度設定を最適化 |
シリンダ内の摩耗 | ガラス繊維入り樹脂使用、長時間使用 | バイメタル仕様に交換、定期点検 |
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 可塑化シリンダ(バレル) |
目的 | 樹脂を加熱・溶融・混練し、射出準備を整える |
構成 | シリンダ、スクリュー、ヒーター、温度センサー |
注意点 | 温度管理、摩耗、焦げ付きの防止が重要 |
コメント